Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
「少し忘れたな」
武蔵はそう思いながらまた、うろ覚えのまま、
――柴の庵に立ちかえり、本尊仏にむかい奉るといえども、観念の床には妄想の化の立そい、称名のおん声だに、煩悩の息とのみ聞えたもう。暮山の雲をながむれば、君が花釵かと心も憂く、閑窓の月にうそぶけば、玉顔われに笑み給うかと迷うも浅まし。
――今生の妄念ついに離れずば、往生の障りともなりぬべければ、御息女所に会い奉り、わが思いのふかき一端を申して、心やすく臨終もせばやと、上人杖をつき、御所へ参りて、鞠の坪の下に、一日一夜ぞ立ちたりける……
「おオいっ、旅の衆、牛に乗ってゆくおさむれえ」
誰か、その時、後ろから呼ぶ者があった。
いつか、牛は町の中にはいっていたのである。
二
問屋場の人足だった。
駈けて来て、牝牛の鼻づらを撫で、牛の頭越しに、武蔵を見あげて、
「おさむれえさん、無動寺から来なすったな」
といいあてる。
「ほ、よう知っているなあ」
「この斑牛は、いつぞや荷を乗せて、山の無動寺へ行った商人に、牛方なしで貸した牛だ。おさむれえさん、いくらか牛賃をおくんなせえ」
「なるほど、おまえが飼主か」
「おれの持牛じゃねえが、問屋場の牛小屋にいる牛だあな。