Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
「おっ母、後で手があいたら、ちょっとここへ来て見さっしゃい。おらあ今日、飛んでもねえ拾い物をして来たぜよ。――何だと思う? 分るめえが、牛だよ、しかもすばらしい牝牛だ。畑にも使えるし、乳も搾れる」
その言葉も、外に佇んでいた武蔵が、よく耳に入れて、その人間の何者かをもっと見届けていたら、後の間違いもなかったであろうに――生憎と彼はもうあらかたの空気を察して、この木立ち囲いの一軒の入口を求め、家の横へ迫っていた。
農家としては、かなり広そうだし、壁造りを見ても、旧家に間違いないが、小作もいない女気もない、藁屋根も苔に朽ちながら、その屋根葺の手も乏しい無人の家らしく思われた。
「……?」
明いている横の小窓。その小窓の下の石を踏み台にして、武蔵は、母屋の内をまずそっと覗いてみた。
なにより先に、彼の眼を射たのは、黒い長押に掛かっている一筋の薙刀だった。めったに民間にあっていい品物ではない。尠なくも、一かどの武将が手艶にかけた業物で、鞘の揉皮には金紋の箔すら朧ろに残って見える。
――さては。
と、武蔵は思い合わせて、よけいに疑いを深くした。
さっき、隅の小屋から足を洗いに飛び出した若い男の面がまえは、ちらと火影に見ただけであるが、到底、凡者の眼ざしではなかった。