Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
武蔵の眸が下へ振向いたと知ると、老母は両手をついているのである。
武蔵はあわてて、向き直らずにいられなかった。一夜の恩にこそ預かっているが、そして、なんの礼ものべずに裏口から逃げ出してしまってこそいるが、この長上から、地へ両手をついて、辞儀されることは何もしていない。
(お老母、勿体ない、お手を上げてください)
そういいたそうに、武蔵は思わず、伸ばしていた膝を屈めてしまった。
「――お武家、さだめし、我のつよい者、他愛ない奴と、お蔑みでございましょうの。恥かしゅうござりまする。しかし……遺恨の、自惚れのと、思い募るのではございませぬ。年頃、杖をつかい馴れて、師もなく、友もなく、またよい相手に巡り会わぬこの伜を、不愍と思し召して、もう一手のお教えをうけたいのでござりまする」
武蔵はなお、無言であった。けれど老母が、届きかねる声を一心に張って、こう下からいう言葉には、耳を洗って聞かなければならない真がこもっていた。
「このままお別れ申しては、どうにも残念でござります。ふたたび貴方のようなお相手に会えるやらどうやら。――なおなお、あの見苦しい敗れ方のままでは、この子も、この母も、以前は名だたる武門であった御先祖に、どう顔向けがなりましょう。