Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
彼は、襟元を披いて、自分のみずおちを、二人へ見せた。
「杖の先が、赤い痕になっているでしょう。もう少し入ったら、恐らく拙者の生命はなかったに違いない」
いいながらも、武蔵はまだ、茫然としているのである。どうして敗れたかを理解し切るまでは。
同じように、権之助も老母も、彼の皮膚にある一点の紅い斑点をながめて、口もきけなかった。
武蔵は襟を合わせて、老母に訊ねた。――今、二人が試合のうちに、腰! と叫んだのは何のためか。あの場合、権之助殿の腰構えに、そも、どういう虚を見出されて、あんな声を発しられたのか。
すると、老母は、
「お恥かしいことじゃが、せがれはただ、あなたの刀を杖で支えるに必死となって、両足を踏まえておりました。退いても危ない、突いても危ない、絶体絶命の縛りに会っての。――それを横から見ておるうち、はっと、武術も何も判らぬわしにすら見えた虚がある。それは――あなたの刀に心のすべてを奪われていたから縛りに会ったのじゃ。手を引こうか、手をもって突こうかと、逆上っているので更に気がつかぬようじゃったが、あの体のまま、手もそのまま、ただ腰を落しさえすれば、自然に杖の先が、相手の胸元へどんと伸びる……そこじゃと、思うたので、何を叫んだのやら思わず口走ったのでござりました」