Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme

Aozora Bunko

唖然としたまま、武蔵は、後のことばも出なかった。

師家の傾く前に、藤次は、道場の普請にと集めた金を持って、お甲と駈落ちしてしまい、侍にあるまじき卑劣者と――当時京都で悪い噂を立てられたものだった。

武蔵も、小耳にはさんでいる。その成れの果てがこの姿か――と、他人の身の末とはいえ、淋しくならずにいられなかった。

「おばさん、早く介抱してやるがよい。あなたの亭主と知ったなら、そんな目に遭わせるのではなかったが」

「穴でもあったらはいりたい気がする」

お甲は藤次のそばへ寄って、水を与え、傷口を縛り、そしてまだ半ばうつつな顔つきへ、武蔵との縁故を話した。

「えっ?」

と、藤次は、活を入れられたように白眼を上げて、

「じゃあ其許が……あの宮本武蔵どのか。――ああ、面目ない」

さすがに恥は知っている。藤次は頭を抱え、それへ詫び入ったまま、しばらくは上げる面もない様子。

武門を落ちて、山沢の賊となって生きてゆくのも、大所から観てやれば、流々転相の世の中の泡つぶ、こうしてまで、生きてゆかねばならぬほどに落ちたのかと思えば、あわれともいえる、不愍ともいえる。

武蔵はもう憎む気もちを忘れていた。