Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
「いい加減におしよ」
「ア痛」
と振向いて、
「なんだ、この城太郎め」
「助さん、呼んでるぞ」
「誰が」
「お前の主人がさ」
「うそいえ」
「うそじゃないよ。また、歩きに出かけるんだとさ。あの小父さん、年がら年中、歩いてばかりいるんだな」
「あ、そうか」
助市の後から、城太郎も駈出して行こうとすると、庭木の陰から思いがけなくも、
「城太さん――。城太さんじゃないの?」
と、呼ぶ者があった。
はっと、城太郎の眼が、真剣になって振顧った。何もかも忘れ切って運命に尾いて歩いているかのようでも、彼の心のどこかには絶えず、見失った武蔵とお通の身を気にとめているらしかった。
今、呼んだのは、若い女の声であった。もしや? ――とすぐ胸がどきっとしたものとみえる。じっと、大きな八ツ手の陰をすかして、
「……誰?」
おずおず寄ると、
「わたし」
と、木陰の白い顔は、葉の下を潜って、城太郎の前に立った。
「なアんだ」
がっかりしたように、城太郎がいい放ったので、朱実は舌うちして、
「なあに、この子はまあ」
と、自分の寄せかけた感傷のやり場を失って、憎そうに、城太郎の背を打った。
「ずいぶん久し振りじゃないの。