Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
もう死骸が追いかけて来る憂いはなかったが、後の面倒を考えたらしい。
河原の水瀬に、彼は、一艘の小舟を見つけた。櫓も付いているし、恰好な乗物と思ったのであろう。それへ乗って、繋いでいる綱を解きかけるのであった。
「やいっ、侍」
半瓦の乾児の、菰の十郎とお稚児の小六の二人だった。
こう木の間からいきなり呶鳴って、河原の水際へ駈け出して行き、
「その舟を、どうする気だ」
と、咎めた。
武者羽織の体には、近づくとまだ血腥いにおいが感じられた。袴にもわらじの緒にも、返り血がこびりついていた。
「……いけないのか」
解きかけた繋綱を放して、その顔がにっと笑うと、
「あたりめえだ。これは、俺たちの持舟だ」
「そうか。……駄賃をやったらよろしかろう」
「ふざけるな、俺たちは、船頭じゃあねえ」
たった今、そこで四人を一人で斬り捨てた侍に対して、こういう口がきける気の暴さは、お稚児や菰の口を借りて、関東の勃興文化がいうのである。新将軍の威勢や江戸の土がいうのである。
「…………」
悪かったとはいわない。
しかし、牡丹色の武者羽織も、それに横車は押せなかったと見え、小舟から出ると、黙ってまた河原を下流の方へ歩き出した。