Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
泥と血にまみれた顔を上げて――土民は、伊織の顔を、にぶい眼で見た。
「はやく、この縄を解くんだよ、解くんだよ」
土民は、這って来た。そして伊織の縄を解くと、そのまま、こときれてしまった。
「見てろ」
伊織は、土橋の上を見て、唇を噛んだ。土匪たちは、追って来た百姓を皆、そこで殺害してしまったが、財物を乗せた牛車の轍が、土橋の腐った所へめり込んでしまったので、それを引き出すのに騒いでいた。
伊織は、水に沿って、河崖の陰を夢中で走った。そして、浅瀬を渡って向う側へ這いあがった。
彼は、一目散に、野を駈けた。田も畑も家もない法典ヶ原を半里も駈けた。
武蔵と二人で住んでいる丘の小屋へやがて近づいた。見ると小屋の側に誰か立って空をながめている――武蔵であった。
「先生――っ」
「おお、伊織」
「すぐ行ってください」
「どこへ」
「村へ」
「あの火の手は?」
「山の者が襲せて来たんですよ。先おととしも襲た奴が」
「山の者? 山賊か」
「四、五十人も」
「あの鐘の音はそれを告げておるのか」
「はやく行って、たくさんな人を、助けてやって下さい」
「よしっ」
武蔵は、一度小屋の中へ引っ返したが、すぐ出て来た。