Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
「武蔵さまがいない!」
「どこぞへ、消えてしまいなすった――」
土民たちは、慈父を見失ったように、その日は、仕事も手につかず、ただ彼のうわさと哀惜に暮れた程だった。
徳願寺の一僧は、武蔵のことばを、思い当って、
「それでは、あの方にすむまいぞ、青田を枯らすな。畑を殖やせ」
と、一同を励ました。そして小屋のそばに、小さい堂を作り、そこへ観音像を納めると、土民たちは、いわれるまでもなく、朝夕仕事にかかる前、仕事の終った後には、武蔵へ挨拶するように、必ずそこへ額ずいた。
――僧の話はそれで終った。だが、長岡佐渡の悔いはいつまでも、胸を噛んで、
「……ああ遅かった」
卯月の夜は、草靄にぼかされて来た。佐渡は、むなしく駒を返しながら、
「惜しいことをした……こういう怠慢は、ひとつの不忠も同じこと。……遅かった、遅かった」
何度も口のうちで呟いた。
入城府
一
両国という地名も橋が出来てから後のことである。まだ両国橋も、その頃はなかった。
けれど、下総領から来る道も、奥州街道から岐れて来る道も、後の橋の架けられた辺りへ来て、大川に突き当っていた。
渡し場には、関門と呼んでよいくらいな、厳しい木戸があった。