Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme

Aozora Bunko

女は、堀の向うに見える、浜倉だの、塀だのの棟を、指で数えて、

「たしか、その次あたりのお屋敷がそうだよ」

と、いう。

「じゃあ、向う側も、木挽町っていうのかい」

「そうさ」

「なあんだ……」

「人に教えてもらって、なあんだとは何さ。だけど、おまえは可愛い子だね。あたしが、柳生様の前まで、連れて行って上げるからおいで」

女は、先に歩き出した。

傘のお化けみたいに、菰をかぶっている姿が、橋の中ほどまでゆくとすれ交った酒くさい男が、

「ちゅっ」

と、鼠鳴きして、女の袂に戯れた。

すると女は、連れている伊織のことなどは、すぐ忘れて、男のあとを追いかけて行き、

「あら、知ってるよこの人は。――いけない、いけない、通すもんか」

男を捉えて、橋の下へ、引きずり込もうとすると、男は、

「はなせよ」

「いやだよ」

「かねがないよ」

「なくてもいいよ」

女は、モチみたいに男にねばりついたまま、ふと、伊織の呆ッ気にとられている顔を見て――

「もう分ってるだろ。わたしはこの人と用があるんだから先へおいで」

と、いった。

だが伊織は、まだ不思議な顔して、大人の男と女が、むきになって争っている状を眺めていた。