Japanische Klassiker mit Furigana
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めいあん
明暗
Lesen Sie 明暗 (めいあん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 322.590 Zeichen · 645 Bildschirme
四十三
津田はそのたびにガーゼで拭き取られなければならない赤い血潮の色を、想像の眼で腥さそうに眺めた。じっと寝かされている彼の神経はじっとしているのが苦になるほど緊張して来た。むず痒い虫のようなものが、彼の身体を不安にするために、気味悪く血管の中を這い廻った。
彼は大きな眼を開いて天井を見た。その天井の上には綺麗に着飾ったお延がいた。そのお延が今何を考えているか、何をしているか、彼にはまるで分らなかった。彼は下から大きな声を出して、彼女を呼んで見たくなった。すると足の方で医者の声がした。
「やっと済みました」
むやみにガーゼを詰め込まれる、こそばゆい感じのした後で、医者はまた云った。
「瘢痕が案外堅いんで、出血の恐れがありますから、当分じっとしていて下さい」
最後の注意と共に、津田はようやく手術台から下ろされた。
四十三
診察室を出るとき、後から随いて来た看護婦が彼に訊いた。
「いかがです。気分のお悪いような事はございませんか」
「いいえ。――蒼い顔でもしているかね」
自分自身に多少懸念のあった津田はこう云って訊き返さなければならなかった。
創口にできるだけ多くのガーゼを詰め込まれた彼の感じは、他が想像する倍以上に重苦しいものであった。