Japanische Klassiker mit Furigana
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めいあん
明暗
Lesen Sie 明暗 (めいあん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 322.590 Zeichen · 645 Bildschirme
八十五
「あるかも知れませんね」
「ああ見えてなかなか淡泊でないからね」
お延ははっと思った。腹の中で小林の批評を首肯わない訳に行かなかった彼女は、それがあたっているだけになおの事感情を害した。自分の立場を心得ない何という不作法な男だろうと思って小林を見た。小林は平気で前の言葉を繰り返した。
「奥さんあなたの知らない事がまだたくさんありますよ」
「あっても宜しいじゃございませんか」
「いや、実はあなたの知りたいと思ってる事がまだたくさんあるんですよ」
「あっても構いません」
「じゃ、あなたの知らなければならない事がまだたくさんあるんだと云い直したらどうです。それでも構いませんか」
「ええ、構いません」
八十五
小林の顔には皮肉の渦が漲った。進んでも退いてもこっちのものだという勝利の表情がありありと見えた。彼はその瞬間の得意を永久に引き延ばして、いつまでも自分で眺め暮したいような素振さえ示した。
「何という陋劣な男だろう」
お延は腹の中でこう思った。そうしてしばらくの間じっと彼と睨めっ競をしていた。すると小林の方からまた口を利き出した。
「奥さん津田君が変った例証として、是非あなたに聴かせなければならない事があるんですが、あんまりおびえていらっしゃるようだから、それは後廻しにして、その反対の方、すなわち津田君がちっとも変らないところ