Japanische Klassiker mit Furigana
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めいあん
明暗
Lesen Sie 明暗 (めいあん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 322.590 Zeichen · 645 Bildschirme
百七十七
雨が来たのだろうか、谿川が軒の近くを流れているのだろうか。雨としては庇に響がないし、谿川としては勢が緩漫過ぎるとまで考えた彼の頭は、同時にそれより遥か重大な主題のために悩まされていた。
彼は室に帰ると、いつの間にか気を利かせた下女の暖かそうに延べておいてくれた床を、わが座敷の真中に見出したので、すぐその中へ潜り込んだまま、偶然にも今自分が経過して来た冒険について思い耽ったのである。
彼はこの宵の自分を顧りみて、ほとんど夢中歩行者のような気がした。彼の行為は、目的もなく家中彷徨き廻ったと一般であった。ことに階子段の下で、静中に渦を廻転させる水を見たり、突然姿見に映る気味の悪い自分の顔に出会ったりした時は、事後一時間と経たない近距離から判断して見ても、たしかに常軌を逸した心理作用の支配を受けていた。常識に見捨てられた例の少ない彼としては珍らしいこの気分は、今床の中に安臥する彼から見れば、恥ずべき状態に違なかった。しかし外聞が悪いという事をほかにして、なぜあんな心持になったものだろうかと、ただその原因を考えるだけでも、説明はできなかった。
それはそれとして、なぜあの時清子の存在を忘れていたのだろうという疑問に推し移ると、津田は我ながら不思議の感に打たれざるを得なかった。