Japanische Klassiker mit Furigana
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めいあん
明暗
Lesen Sie 明暗 (めいあん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 322.590 Zeichen · 645 Bildschirme
八十四
八十四
自分のまだ知らない夫の領分に這入り込んで行くのはお延にとって多大の興味に違なかった。彼女は喜こんで小林の談話に耳を傾けようとした。ところがいざ聴こうとすると、小林はけっして要領を得た事を云わなかった。云っても肝心のところはわざと略してしまった。例えば二人が深夜非常線にかかった時の光景には一口触れるが、そういう出来事に出合うまで、彼らがどこで夜深しをしていたかの点になると、彼は故意に暈しさって、全く語らないという風を示した。それを訊けば意味ありげににやにや笑って見せるだけであった。お延は彼がとくにこうして自分を焦燥しているのではなかろうかという気さえ起した。
お延は平生から小林を軽く見ていた。半ば夫の評価を標準におき、半ば自分の直覚を信用して成立ったこの侮蔑の裏には、まだ他に向って公言しない大きな因子があった。それは単に小林が貧乏であるという事に過ぎなかった。彼に地位がないという点にほかならなかった。売れもしない雑誌の編輯、そんなものはきまった職業として彼女の眼に映るはずがなかった。彼女の見た小林は、常に無籍もののような顔をして、世の中をうろうろしていた。