Japanische Klassiker mit Furigana
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めいあん
明暗
Lesen Sie 明暗 (めいあん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 322.590 Zeichen · 645 Bildschirme
七十一
二人はついに硯箱の前に飾ってある大事な一輪挿を引っ繰り返した。紫檀の台からころころと転がり出したその花瓶は、中にある水を所嫌わず打ち空けながら畳の上に落ちた。二人はようやく手を引いた。そうして自然の位置から不意に放り出された可愛らしい花瓶を、同じように黙って眺めた。それから改めて顔を見合せるや否や、急に抵抗する事のできない衝動を受けた人のように、一度に笑い出した。
七十一
偶然の出来事がお延をなお小供らしくした。津田の前でかつて感じた事のない自由が瞬間に復活した。彼女は全く現在の自分を忘れた。
「継子さん早く雑巾を取っていらっしゃい」
「厭よ。あなたが零したんだから、あなた取っていらっしゃい」
二人はわざと譲り合った。わざと押問答をした。
「じゃジャン拳よ」と云い出したお延は、繊い手を握って勢よく継子の前に出した。継子はすぐ応じた。宝石の光る指が二人の間にちらちらした。二人はそのたんびに笑った。
「狡猾いわ」
「あなたこそ狡猾いわ」
しまいにお延が負けた時には零れた水がもう机掛と畳の目の中へ綺麗に吸い込まれていた。彼女は落ちつき払って袂から出した手巾で、濡れた所を上から抑えつけた。