Japanische Klassiker mit Furigana
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めいあん
明暗
Lesen Sie 明暗 (めいあん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 322.590 Zeichen · 645 Bildschirme
六十八
彼女はついに自分を抑えつけた。どんな色をも顔に現さなかった。
「継子さんは得な方ね。誰にでも好かれるんだから」
「そうも行かないよ。けれどもこれは人の好々だからね。あんな馬鹿でも……」
叔父が縁側へ上ったのと、叔母がこう云いかけたのとは、ほとんど同時であった。彼は大きな声で「継がどうしたって」と云いながらまた座敷へ入って来た。
六十八
すると今まで抑えつけていた一種の感情がお延の胸に盛り返して来た。飽くまで機嫌の好い、飽くまで元気に充ちた、そうして飽くまで楽天的に肥え太ったその顔が、瞬間のお延をとっさに刺戟した。
「叔父さんもずいぶん人が悪いのね」
彼女は藪から棒にこう云わなければならなかった。今日まで二人の間に何百遍となく取り換わされたこの常套な言葉を使ったお延の声は、いつもと違っていた。表情にも特殊なところがあった。けれども先刻からお延の腹の中にどんな潮の満干があったか、そこにまるで気のつかずにいた叔父は、平生の細心にも似ず、全く無邪気であった。
「そんなに人が悪うがすかな」
例の調子でわざと空っとぼけた彼は、澄まして刻煙草を雁首へ詰めた。
「おれの留守にまた叔母さんから何か聴いたな」