Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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めいあん

明暗

夏目 漱石

Lesen Sie 明暗 (めいあん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 322.590 Zeichen · 645 Bildschirme

Aozora Bunko

八

八

「厭よ、あたし」

お延はすぐ断った。彼女の言葉には何の淀みもなかった。遠慮と斟酌を通り越したその語気が津田にはあまりに不意過ぎた。彼は相当の速力で走っている自動車を、突然停められた時のような衝撃を受けた。彼は自分に同情のない細君に対して気を悪くする前に、まず驚ろいた。そうして細君の顔を眺めた。

「あたし、厭よ。岡本へ行ってそんな話をするのは」

お延は再び同じ言葉を夫の前に繰り返した。

「そうかい。それじゃ強いて頼まないでもいい。しかし……」

津田がこう云いかけた時、お延は冷かな(けれども落ちついた)夫の言葉を、掬って追い退けるように遮った。

「だって、あたしきまりが悪いんですもの。いつでも行くたんびに、お延は好い所へ嫁に行って仕合せだ、厄介はなし、生計に困るんじゃなしって云われつけているところへ持って来て、不意にそんな御金の話なんかすると、きっと変な顔をされるにきまっているわ」

お延が一概に津田の依頼を斥けたのは、夫に同情がないというよりも、むしろ岡本に対する見栄に制せられたのだという事がようやく津田の腑に落ちた。彼の眼のうちに宿った冷やかな光が消えた。