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Japanische Klassiker mit Furigana

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めいあん

明暗

夏目 漱石

Lesen Sie 明暗 (めいあん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 322.590 Zeichen · 645 Bildschirme

Aozora Bunko

下は席を出る人、座へ戻る人、途中を歩く人で、一度にざわつき始めていた。坐ったぎりの大多数も、前後左右に思い思いの姿勢を取ったり崩したりして、片時も休まなかった。無数の黒い頭が渦のように見えた。彼らの或者の派出な扮装が、色彩の運動から来る落ちつかない快感を、乱雑にちらちらさせた。

土間から眼を放したお延は、ついに谷を隔てた向う側を吟味し始めた。するとちょうどその時後をふり向いた百合子が不意に云った。

「あすこに吉川さんの奥さんが来ていてよ。見えたでしょう」

お延は少し驚ろかされた眼を、教わった通りの見当へつけて、そこに容易く吉川夫人らしい人の姿を発見した。

「百合子さん、眼が早いのね、いつ見つけたの」

「見つけやしないのよ。先刻から知ってるのよ」

「叔母さんや継子さんも知ってるの」

「ええ皆な知ってるのよ」

知らないのは自分だけだったのにようやく気のついたお延が、なおその方を百合子の影から見守っていると、故意だか偶然だか、いきなり吉川夫人の手にあった双眼鏡が、お延の席に向けられた。

「あたし厭だわ。あんなにして見られちゃ」

お延は隠れるように身を縮めた。それでも向側の双眼鏡は、なかなかお延の見当から離れなかった。