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Japanische Klassiker mit Furigana

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めいあん

明暗

夏目 漱石

Lesen Sie 明暗 (めいあん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 322.590 Zeichen · 645 Bildschirme

Aozora Bunko

「名前は何と云ったっけね」

「名前は知りません」

看護婦はなかなか名前を云わなかった。津田はそこに発見された抵抗が愉快なので、わざわざ何遍も同じ事を繰り返して訊いた。

「じゃこれから君の事を栃木県、栃木県って呼ぶよ。いいかね」

「ええよござんす」

彼女の名前の頭文字はつであった。

「露か」

「いいえ」

「なるほど露じゃあるまいな。じゃ土か」

「いいえ」

「待ちたまえよ、露でもなし、土でもないとすると。――ははあ、解った。つやだろう。でなければ、常か」

津田はいくらでもでたらめを云った。云うたびに看護婦は首を振って、にやにや笑った。笑うたびに、津田はまた彼女を追窮した。しまいに彼女の名がつきだと判然った時、彼はこの珍らしい名をまだ弄んだ。

「お月さんだね、すると。お月さんは好い名だ。誰が命けた」

看護婦は返答を与える代りに突然逆襲した。

「あなたの奥さんの名は何とおっしゃるんですか」

「あてて御覧」

看護婦はわざと二つ三つ女らしい名を並べた後で云った。

「お延さんでしょう」

彼女は旨くあてた。というよりも、いつの間にかお延の名を聴いて覚えていた。

「お月さんはどうも油断がならないなあ」