Japanische Klassiker mit Furigana
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めいあん
明暗
Lesen Sie 明暗 (めいあん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 322.590 Zeichen · 645 Bildschirme
やがて二人の間に問答が起った。
「なぜ取らないんだ、原君」
「でもあんまり御気の毒ですから」
「僕は僕でまた君の方を気の毒だと思ってるんだ」
「ええ、どうもありがとう」
「君の前に坐ってるその男は男でまた僕の方を気の毒だと思ってるんだ」
「はあ」
原はさっぱり通じないらしい顔をして津田を見た。小林はすぐ説明した。
「その紙幣は三枚共、僕が今その男から貰ったんだ。貰い立てのほやほやなんだ」
「じゃなおどうも……」
「なおどうもじゃない。だからだ。だから僕も安々と君にやれるんだ。僕が安々と君にやれるんだから、君も安々と取れるんだ」
「そういう論理になるかしら」
「当り前さ。もしこれが徹夜して書き上げた一枚三十五銭の原稿から生れて来た金なら、何ぼ僕だって、少しは執着が出るだろうじゃないか。額からぽたぽた垂れる膏汗に対しても済まないよ。しかしこれは何でもないんだ。余裕が空間に吹き散らしてくれる浄財だ。拾ったものが功徳を受ければ受けるほど余裕は喜こぶだけなんだ。ねえ津田君そうだろう」
忌々しい関所をもう通り越していた津田は、かえって好いところで相談をかけられたと同じ事であった。