Japanische Klassiker mit Furigana
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めいあん
明暗
Lesen Sie 明暗 (めいあん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 322.590 Zeichen · 645 Bildschirme
鏡は等身と云えないまでも大きかった。少くとも普通床屋に具えつけてあるものぐらいの尺はあった。そうして位地の都合上、やはり床屋のそれのごとくに直立していた。したがって彼の顔、顔ばかりでなく彼の肩も胴も腰も、彼と同じ平面に足を置いて、彼と向き合ったままで映った。彼は相手の自分である事に気がついた後でも、なお鏡から眼を放す事ができなかった。湯上りの彼の血色はむしろ蒼かった。彼にはその意味が解せなかった。久しく刈込を怠った髪は乱れたままで頭に生い被さっていた。風呂で濡らしたばかりの色が漆のように光った。なぜだかそれが彼の眼には暴風雨に荒らされた後の庭先らしく思えた。
彼は眼鼻立の整った好男子であった。顔の肌理も男としてはもったいないくらい濃かに出来上っていた。彼はいつでもそこに自信をもっていた。鏡に対する結果としてはこの自信を確かめる場合ばかりが彼の記憶に残っていた。だからいつもと違った不満足な印象が鏡の中に現われた時に、彼は少し驚ろいた。これが自分だと認定する前に、これは自分の幽霊だという気がまず彼の心を襲った。凄くなった彼には、抵抗力があった。彼は眼を大きくして、なおの事自分の姿を見つめた。