Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひのとびら

火の扉

岸田 国士

Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate

Aozora Bunko

サラリーのためにだけ仕事をし、或は仕事をしているふりをする同僚の顔をみているのが苦しい。

ことに、彼には話相手というものがないのは淋しかつた。学校の教員室はその意味では唯一の油の売り場所だが、ちかごろは、なんとなく気づまりであまり足が向かなくなつた。先生がみんな陰うつな表情をしていた。議論を吹きかけると、それ/″\に自分の穴へひつこんでしまうように思われた。

そんなわけで彼は、いゝ機会をつかまえて、井出夫人に近づきはじめた。もちろんたゞの話相手としてではなかつた。北原ミユキがのぼせるわけとあまり違いはなかつたけれど、こつちは異性の相手というだけが、もうすこし複雑な色合いをもつていた。

あれから三日に一度、時としては、一日おきぐらいに、井出夫人のところへ顔を出した。野菜や果物をもつて行くこともあり、手ぶらで行くこともあつた。手ぶらで行くときは、ちよつとしたニュースをみやげにした。

井出夫人は、たいがいミシン仕事をしていた。縁伝いに、そのそばへ行つて、仕事の邪魔をせぬように話をしかけた。夫人は、立つていつて茶を入れることもあるが、今日は忙しいからと言つて、そのまゝミシンをはなれないこともある。