Classici giapponesi con furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate
八
「うむ。それやまあ、ゆつくりでいゝさ。あとで腹がすくから、とにかく食え」
彼女は、そこで、自分が手をつけなかつた弁当をとりだし、
「冷えてますけど、これ、およろしかつたら……伊那谷の新米ですのよ」
「ぜいたくしよるなあ」
と、それでも頬をほころばせながら、夫は握り飯の一つをつまみあげた。そして、言つた。
「いろ/\お前には話したいことがある。話したいことはあるが、余計なことは言わんよ」
八
――話したいことはあるが、余計なことは言わん、と、夫の一徳は、そう前おきをして、握り飯をうまそうにほおばり、さて続ける。
「手紙であらましはおれの気持ちもわかつてるだろうが、どうも手紙つていうやつはにが手でなあ。言いたい気持は書けんよ。実を言うとなあ、この仕事もやつとけりがついたし、二三日前、役所からはお暇が出た。ほかの仕事へまわれば、もうしばらく勤めてもよろしいという話だつたが、おれは自分の責任だけ果せば、別にお上の飯を食わしてもらわんでもいゝと思つたから、それは断つた。部下の身のふり方も、大体きまつたらしいので、これも安心していゝわけだ。そこで、今度はおれ自身のこれからの問題だが、これをひとつ、はつきりお前の耳に入れてだな、よく納得してもらわにやならんと思つたのだ。