Classici giapponesi con furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate
二
が、それだけに、北原ミユキには、意外であつた。
「結婚? わたしが? 奥さま、それ真面目なお話?」
と、眼をみはるのを、
「真面目よ。大真面目よ。あたしは案外ふるい女だけど、結婚のことだけは、ありきたりの結婚を考えてはいないの。それはわかつてちようだいね。そうよ、あなたは、あなたのような方は、ほんとに生きる道をそこに求めなければうそだと思うわ」
二
北原ミユキがせんたくの手をやすめずに、じつとうつむいたまゝ考えこんでいる様子なので、康子はさらに言葉をつゞけ――
「いつさいの行きがかりをすてるつていうことが、むろん条件よ。あなたにその決心がつきさえすればいゝの。いつかもお許したように、あなたが苦しんでいらつしやるほんとうの原因は、なに? もつともらしい理くつをつけないでさ。それがはつきりすれば、あとはなんでもないでしよう? 早く言えば、美しい夢が破れたつていうことじやないの? あなたのものだと思つてらしつたものが、そうでなかつたつていうだけの話よ。そのあとは、あなたがご自分を殺すか、生かすかよ。しつかりしてちようだい」
「…………」
「いま、あなたに必要なのは、あなたの苦しみをいつしよに苦しむひとじやなくつて、あなたに新しい希望と力とを与えてくれるひとだわ。