Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひのとびら

火の扉

岸田 国士

Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate

Aozora Bunko

十

「もう一度、今のこと、言つて!」

「今のことつて、なに?」

「今のことよ。万が一……そんなことがあつたら、それから、どうなの?」

「二度は言わないよ」

「そんならいゝわ。わたし、もう、どうなつてもいゝわ。どうなつてもいゝつて、言つてるのよ」

彼女は、眼をうすくとじて、その顔を、市ノ瀬牧人の方へ寄せかけようとした。が、ハッとわれに返つて、彼女は、大きくため息をついた。

十

急に打ちしおれたように、北原ミユキは、首をうなだれて、水面に浮くもくずをながめていたが、やがて、

「もう一と月はやく、こうして、あなたとお会いしたかつたわ……。いつか、東京の奥さんのお宅でお会いしたわね。あの時分だと、まだよかつたんだけれど……」

「そりや、どういう意味な?」

「わたしのことで、奥さんから、もつとほかになにか特別なこと、聞いておいでん?」

「そんなこと言つたつて、わからんよ。わしが知つとらにやならんことは、みんな知つとるつもりだに」

「そうかしら? ほんと? そんなら、言つてもむだかも知れないけれど、やつぱり、わたしの口から言うわ。その方がせい/\するから……。でも、こわいの、わたし……」