Classici giapponesi con furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate
四
北原ミユキと市ノ瀬牧人との新しい生活のなかに、自分の占める場所はもうない、という気がした。それはその通りにちがいないが、そのことはまた、この若い二人の運命を自分の手が導き、決し、そして、その運命は必ずしも希望にのみ輝いてはいないという不安をうち消すものではなかつた。あらゆるいまわしい想像もできなくない。それらの想像は驚くばかり生き生きと彼女の胸に描きだされた。そうなると、もう、じつとしてはいられなかつた。日ましに彼女は憂うつになつた。
が、こういう康子の心理状態は、別の原因も手伝つていたことはたしかで、第一に、例の、父の世話をしていた小夜という女が、最近、露骨に康子を邪魔もの扱いにしだしたことである。なるほど、康子は、東京へ移つてからまだ自分で収入の道を講じてもいなかつたし、昔から家にあつた道具類を小夜と相談のうえ売り売りしていたのであるが、その度ごとに、小夜は渋い顔をし、なんの証拠もないのに、これ/\は自分がだんな様からいたゞいたものだ、と言い張り、しまいには、「このお家だけは残しといてくださいますね」と、高飛車に談判をかける始末であつた。
「この家は別にあなたのものになつてるわけじやないでしよう?」