Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate
二
「まあ、まあ……」
と、いつに変らぬ井出夫人の姿があらわれた。
古びてはいるが趣味をこらした調度の、どことなく日本ばなれのした応接間へ通されて、市ノ瀬牧人は、薄地の白いブラウスを無造作に着た井出夫人と向い合い、自分がいまこゝにいることが夢ではないかと思つた。それほど、夫人そのものはこの周囲に溶けこみ、自分だけが別の世界にいることがわかつた。
「こゝはどういうおうちですか?」
彼は、開け放されたガラス戸のむこうに、夏の木立の青々と茂つた庭から、飾りだなの中に並んだ西洋人形や、つぼや、革とじの書物や、壁にかゝつている大きな裸体画や、暖炉の上の珍しい振子時計やに眼をうつしながら、たずねる。
二
「こゝはどういうおうちですか」という市ノ瀬牧人の問いに、井出康子は、いたずらつ子のように笑いながら、
「どういうおうちつて、あたしのうちよ。父が最近なくなつて、そのあと始末をしに来たの。ほかにだあれもいないんですもの」
それはその通りであつた。彼女がかたづくと間もなく、一人の兄は病死し、兄嫁が実家へ帰つてしまうと、独り者の父は、えたいの知れぬ女をどこからか連れ込んで身のまわりの世話をさせていたが、近所の話では、その女にはほかに男があり、父の死後も、がんとしてこの家に居据わるつもりでいるらしい。