Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひのとびら

火の扉

岸田 国士

Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate

Aozora Bunko

九

農業会……役場……でしたかしら、お勤めは?」

「はあ、農業会に籍はおいてるんですが、なんにもしてないようなもんです。そう、そう、けさ、北原先生からハガキをもらつたんですが、そちらへもなにか便りがありましたか?」

「北原先生? いゝえ?」

と、康子は、まぶたをいつぱいに引きあけ、

「それで、北原先生、いま、どちらに?」

康子が東京から帰つて来た時は、もう、北原ミユキは学校をやめて、実家へもどつたといううわさを耳にしただけであつた。

「ハガキにはたゞ、瀬戸内海のある港町にて、と、ばかりで、見当がつかんのですが……」

「瀬戸内海のある港町……」

と、康子はおうむ返しに口の中で云つてみる。

「どうも変だと思つてたんです。急に学校をやめて遠くへ行くようなことを言つてましたが……。なんでも、復員船のはいる港を、片つぱしから歩いてるらしいんです」

「まあ、いじらしい……。でも、北原先生らしいわ」

「まつたく、情熱家だから……」

市ノ瀬牧人は、べつに皮肉らしくもなくそう言い、その言葉に自分でてれている風であつた。

九

康子が宿へ帰ると、北原ミユキからの部厚い手紙がついていた。恐らく市ノ瀬へあてたハガキと同時に書いたものであろう。