Classici giapponesi con furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate
すべてを与えるには
一
が、それもこれも、特に深い考えがあつてのことではなく、たゞ、この夢多き処女の、成熟した人妻康子に対するなみ/\ならぬ興味、強いて言えば崇拝というようなところから来ていることはたしかであつた。北原ミユキは、事実、待ちこがれているもの、たゞひとりの異性への思慕を、年上の同性の豊かな感受性のなかで温めるよりほかなかつたのである。
「さ、みなさん、勝手におとりになつて……お茶うけがなんにもないけれど……」
と、康子は盆をこたつ板の上にのせ、
「北原先生、あなたが遠慮してらしつちやだめよ」
「いやだ、また、先生だなんて……」
北原ミユキは、存分に甘えた眼つきで康子をにらむ。
と、障子の外で、母屋の細君の声、
「井出さん、電報が来ましたに」
すべてを与えるには
一
電報は東京の夫からであつた。
「ヤスコヒトリデ スグ コイ」
ひとりで来いという意味は、子供など連れて来るなということにきまつているにしても、それを特に強くいう理由があるのだとすれば、康子は、そこになにか重大なものを読みとらないわけにいかなかつた。戦争中ならともかく、ちよいと帰つて来るぐらいの暇もないということは、これまでの手紙の簡単な説明だけでは、どうしても信じられないことである。