Classici giapponesi con furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate
五
そう言つて、彼女は、そこへ突つ伏した。
「強情だなあ、お前は……。どうして、うそでもいゝから、おれといつしよに死ぬ、と言つてくれないんだ? 気安めに、あとを追うとでも言つたらいゝじやないか。とにかく、それが夫婦の情というもんだ」
すこし折れて来たふうがみえるので、彼女は、そのまゝ、顔をあげずに云つた。
「その夫婦の情について、あたくしを疑つてらつしやるんですの?」
五
一徳は寝間着のはだに寒さがしみるとみえ、両腕をかわる/″\こすりながら、
「そうとばかりも言えんが、疑いたくなることもある。いつたい、お前は女らしくない」
女らしくない、という夫の批評は、これがはじめてではなかつた。しかし、夫がそれを言いだす時は、きまつてなにか意見の合わない時であつた。妻としてそういう印象を与えることは自分でもまずいと気がついていたから、彼女は、どうでもいゝことはずいぶん彼の言うなりになつていたつもりである。ところが、その言うなりになり方が、どうもまだ夫の気に入らぬらしい。
そういうことのあつた翌日、夫の一徳は、昼すぎに、いつものように服を着かえ、出かけるのかと思うとそうでもなく、なにやら書類のようなものを折カバンから出して、ひとつ/\ていねいにそろえたり、不用のものは破いたりしていた。