Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate
二
すこしもいやな顔はしなかつた。いつ行つても、きちんと身じまいをし、端然と仕事に向い、あたゝかく澄んだ眼をあげて彼にほゝえみかけた。
彼はなが居はしない。――あら、もう? と、いわば恨みがましい夫人の口調ぐらい彼の耳をこころよくくすぐるものはないからである。
今日も、ひるすぎの一つ時を、彼は待ちあぐんだ。春の日ざしのやわらかに射しこむその縁先で、彼は夫人の手に白梅の一枝をさゝげるつもりでいるのである。
二
「あゝ、やつぱりそうだつたわ。なにか花の香りが流れてくるように思つたの」
と、井出夫人は、市ノ瀬牧人の差しだす白梅の枝を抱くようにして受けとつた。
「花びんが一つしかなくつてねえ」
そう言いながら、もうだいぶんしおれかけている床のスイセンをぬいて、そのあとへ梅の枝をさした。首をかしげて、しばらく、それに見入りながら、
「あなたはよく気のつく方ね。それに、そういうことを照れないでなさるから、えらいわ」
ずけ/\ものを言う彼女には、市ノ瀬牧人はとつくになれていたけれども、このあいさつには閉口した。
「奥さん、批評はかんべんしてください。わしの童心が傷つきますから……」