Classici giapponesi con furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate
二
しかし、この若い女は、気が狂つているのではない。愛人の消息を一刻も早く知りたい北原ミユキの、せめてこうでもしたらと、考えに考えぬいた妙案なのである。
げんに、時たまは、声をかけてくれるものもあつた。
「杉部隊はこの船にはたしか一人も乗つちやおらんぜ」
とか、
「浜島茂か、どつかで聞いた名前だぞ」
とか、
「このあとで宇品へはいる船が杉部隊の本部を乗せるはずだ」
とか、
「おい、ねえちやん、停車場の待合所でたずねてみなよ。その方が落ちついて話ができらあ」
とか、そんな親切なことを言つてくれるものすらあつた。
彼女は、それもそうだとは思つた。しかし、停車場では、この船からおりるもの一人残らずに、というわけにいかぬのが心もとなかつた。できればひとり/\話しかけて、そのひとり/″\から、なにかしらの手がかりを得たかつた。――新聞はたゞこの船で旭一三六二四部隊の一部千何百名が引揚げるという報道をかゝげたにすぎなかつた。
二
北原ミユキのこの狂乱にちかいすがたは、今日はじめてのことではない。この田辺の港にたどりつくまでに、もう、浦賀の船着場でもそれはみられた。浦賀では、木札をかゝげる代りに、大声で「浜島茂」