Classici giapponesi con furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate
七
そうじやない、きつと?」
北原ミユキはしばらく考えていた。やがて、前よりはいくぶん落ちついた口調で、
「それにしても、わたしすこしがつかりしましたの。もつともつと市ノ瀬が純粋な気持でわたしに手を差しだしてくれたものと思つていましたわ。どんなに、わたし、あの人のひろい心にうたれたかしれませんわ。わたしは、あのひとが、なにもかも無条件でゆるしてくれたということ、たゞそれだけの感動で、あのひとの前にひざをついてしまつたんですの。奥さまのことを、そりや、ひとこと申すには申しました。しかし、それは、わたしをなぐさめるために、半分じようだんを言つてるんだと思いましたの。ところが、それは、じようだんではなかつたんです」
七
北原ミユキは、思ひつめたように、くちびるをかんでいる。康子はたずねた――
「それで、もうあなたは、市ノ瀬さんのところへいらしつてるの?」
「えゝ、先月の十日から……」
「じや、そのほかのことは、うまく行つてるわけね?」
「うまくですか、どうですか……とにかく、夫婦みたいに暮してますわ」
めずらしく、北原ミユキの口元に自ちよう的な微笑がうかぶ。
「おや、みたいとは変な言いかたね。