Classici giapponesi con furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate
五
その印象はいづれも、夫らしくない印象で、寒々としたものを彼女の胸に伝えるばかりであつた。
「おねえさん、どう、ピヤノとのお別れに、今晩は、もうこれでいゝつていうまで、おひきになつてごらんなさいよ。あたしたち聞かせていたゞくわ」
いよ/\あすは来るという前の晩、夕食をしながら、義妹の百々子が言つた。
風の荒い晩であつた。
五
夕食のあと片づけがすむと、しゆうとの乃婦は、
「あたしにやどうしても西洋の音楽つていうもんはわからないけれど、これからはやつぱりそれじやいけないんだろうね。さあ、そうかといつてお琴や三味線が聞けないとなつたら、あたしやどうにもさびしいね」
と、こんな前おきをしておいて、康子がピヤノの方へ起つて行きかねているのを、
「さあ、さあ、ひきおさめならあたしに遠慮はいらないよ。この風ならご近所へもそう聞えやしないだろう」
この程度で異議はないものとみとめなければならぬ。康子は義妹の方へ眼で笑いかけながら座をたつた。
楽譜の一つ/\をめくつてみながら、それ/″\に織りこまれた感情のあやが、過ぎ去つた自分の心の歴史と結びついて胸のうずくような旋律ばかりであることに気がつく。