Classici giapponesi con furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate
九
九
康子は夫の安否をたずねられて、やゝ口ごもりながら、
「えゝ、おかげさまで……それはそうと、いつたいこれはなに、中園さん、このありさまは……?」
すると、中園は、にやりとはしたが、なんとも言えぬ表情で、
「申しわけありません。ですから、こういうかつこうで遠くへ落ちのびるところです」
と、言つた。別にしやれを言つたつもりもないらしく、ガッシリした肩でリュックをゆすぶつた。
「あなたの申しわけなんぞどうでもいゝわ。ご家族はどこにいらつしやるの?」
「え? あゝ、まだご存じないわけですなあ、私、家内をこんど離縁したもんですから、いま、娘と二人暮しであります。娘ですか? ついこの間、家内の実家から鎌倉の親せきへ連れもどしたんですが、いまからちよつとその親せきへ顔を出して、それから……。まあ、そんな話はどうでもいいでしよう。ところで、井出大佐殿は、まだ御用ずみになられませんか?」
「えゝ、なんですか、まだH町のほうにおりますの」
と、彼女は言いはしたが、すぐそのあとで、中園がどうしてあの可愛らしい細君と別れなければならぬのかを聞きたゞしたくなり、が、それはあまりにぶしつけなことに思われ、