Classici giapponesi con furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate
二
「あるところを教えろよ。おれが自分でとつてくるよ」
「あるにはあるが、たゞじやよこさんよ」
「江原さんとこから来たつて言やいゝんだろう」
すると、モデル台の上へあぐらをかいている仕事着の男が、
「おい/\、そりやあ昔のことだ。今や時代は一変して、江原久作も禁酒党の仲間入りをしようとしてるんだ。尾関のヤツが舞いこんで来て、このアトリエの静寂を破りやがつた。それもすばらしいモデルを連れて来た手柄にめんじて、ゆるしてはいるが、もうそろ/\ヤッコさんに出てつてもらおうと思つてるんだ」
「出るも出ないもないさ。これは江原久作のアトリエだと思つたら大間違い……」
と、尾関昇は、ビールを振りながらわめいた。
二
「そも/\このアトリエは、彼のおやじが建てたもので、彼のおやじは、こゝで幾多の傑作をものした。おれは、かつての少年の日を思い出す。江原老先生は、そのへんで静かにのみを動かし、おれは、毎日そのそばでじつと人間の顔が浮きあがつてくるのをながめていた。その時、彼久作はなにをしていたか? 彼ははだしで鶏を追いまわしていたのである。今日、彼は、おやじの業をついだつもりでいるけれども、はたして彼におやじだけの仕事ができるか? とすれば、おれをそんなに邪魔者あつかいしなくてもいゝのだ。