Classici giapponesi con furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate
道すゝまず
一
空の一端からは黒い雲がわきあがつていた。
雨がぽつり/\と落ちはじめた。
峰を吹く風の音が、遠い汽笛の音にまじつて聞えていた。
道すゝまず
一
二階の寝室の窓から、東南一帯のくぼ地が見渡せるのだが、そのあたりは軒並に焼けおちた黒焦げの柱や壁がまだ取り払われもせずにいる。とき/″\、焼跡を片づけに手車をひいてくるものもあり、まばらにトタン張りの小屋が建つただけで、この真昼に、人ひとり通らぬ荒涼たるながめである。
井出康子は、このながめを、毎日、飽かずながめ、遠景の森のうえをトビが舞つているような日には、この廃きよにうつる物の影をなつかしむように、小声で西洋の子守歌をうたつてみることもある。
しかし、焼跡の連想は、彼女にとつても、おゝかた暗く、痛ましいものであることは当然であつた。そこには、まだ炎々とほのおがたち昇つているような錯覚に襲われることすらある。彼女は、そのほのおにつゝまれて消えうせた命と、こうして生きのびている人間の命とのつながりを考えてみる。夫の幻が浮ぶ。自分をしかりつけるような声も聞える。「戦争はなんのためにあつたのだ」と、その声は叫んでいるようだ。