Classici giapponesi con furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate
十
わしがやらずか?」
結局、そういうことになり、市ノ瀬牧人は井戸端へまわつた。
康子が夕飯の支度にとりかゝつている間、中園三郎と市ノ瀬牧人は、座敷とえんとにそれ/″\陣どつて、親しく言葉を交した。戦争の話にはちよつと触れたきりで、二人は日本の将来について語り合つた。中園が単純に経済問題などを論じ、自分の生活ということで頭がいつぱいなのをみて、市ノ瀬は、現役将校の転身とはこういうものかと思つた。中園は中園で、市ノ瀬の見かけによらぬ複雑な考えに眼をみはり、祖国の運命をおもいなやむ青年のすがたをそこに発見して、なにか久々で厳粛なものに接する気がした。
と、一方では、子供たち二人が、絵本にもあきたとみえて、手をひき合つて表へ駆け出して行つた。
「どこへ行くんだ?」
中園はそつちへ声をかけたが、そのあとでうなるように言つた――
「君は、いつたい、いくつですか、年は?」
十
夕食には、市ノ瀬牧人も引きとめられて、ぜんについた。
女世帯にも近ごろわずかながら配給になつたという何級かの酒が出た。
なんの屈託もなさそうに、慣れない事業の困難さを語つて聞かせる中園の酔のまわつた調子は、例の軍人独特のものだつたが、康子は、それがそんなに聞きづらくはなかつた。