Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひのとびら

火の扉

岸田 国士

Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate

Aozora Bunko

うしろ影

一

なるほど、道は登り一方で、人里をはるかにはなれた森の間の草地である。炭を焼いたあとの、雑木の切株のまわりに、によき/\とワラビの芽がのび、これはなんとしても採りつくせぬというありさまであつた。

「なんていうありかた、これは? まるで、ワラビ畑ね」

と、井出康子は、むしろ手を下さずにながめていたいというふうに、眼をみはつた。

市ノ瀬牧人は、やゝ得意げに、

「あるところには、ある、というこつてす」

「まつたく……あればそれほどありがたくないつていうこと、かしら? でも、もつたいないから、持てるだけ持つて帰るわ」

が、その「持てるだけ」が問題であつた。市ノ瀬牧人は、ひと握りずつ束にしたのを、リュックいつぱいにつめこみ、二つの手さげ袋は、はみだすほどになつた。

「もう、たくさん、たくさん」

そこで、弁当をということになつた。

ところが、市ノ瀬牧人は、近所の知合いの家で昼の支度を頼んであるからと、先にたつて歩きだす。そんな必要はないのにと、彼女がいくら迷惑がつても、いつこう耳をかさぬ。

しかたがなしに、ついて行くと、谷あいの一段低くなつたところに、さゝやかなわらぶきの一軒家があつて、主婦らしい中年の女が、土間でなにやら言いわけめいたことをくど/\と言つていた。