Classici giapponesi con furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate
四
相手は、近ごろきまつた右側通行を守つていない。だから、牛の鼻先へ来て彼女はハンドルをひねつた。そのとたん、牛車のすぐ後から、そいつを追越そうとして左へ外れて出たもう一台の自転車が、彼女を乗ものぐるみ跳ねとばした。
四
相手も重心を失つて自転車をたゝきつけ、前のめりにのめつた。
が、二人は同時に起ち上つて顔を見合わした。そして、笑つた。
「けがはなかつたかね」
「あんたは大丈夫?」
「ちつとも見えんじやつたもんで」
「交通規則を守らないからよ」
「一人だけ守る先生が悪いだ」
ひざ小僧がちく/\痛むのをじつとこらえて、彼女はにらむまねをした。
この若い衆は市ノ瀬牧人という農業会の指導部にいる男で、ついせんだつて復員したばかりである。以前から学校へ時どき遊びに来るので顔見知りになつている程度だが、北信の出身というだけあつて、はだ合いが土地のものと一風変つていた。どちらかといえば当りのやわらかな周囲にまじつて、これはまたゴツつとしたところがあつた。へらず口をたゝく癖はどつちにもあるが、このへんの人間には市ノ瀬牧人のとんちがまるでない。彼女は、そこに興味をもつていたと言えば言えるのである。