Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひのとびら

火の扉

岸田 国士

Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate

Aozora Bunko

八

お会いすれば話はわかると思います」

市ノ瀬牧人は、勝手を知らぬ奥へ向つて、

「奥さん……奥さん……井出さん……」

と呼んでみた。

康子が二階からおりて来た。

客と彼女との問答――

「井出さんの奥さんですか?」

「はあ、さようでございます。あなたさまは?」

「ぼく、北原といつしよにいるもんですが……北原ミユキは、こちらに伺つていますか?」

「お名前をおつしやつていたゞかなければ、お返事はできませんわ」

「ぼくの名前ですか。あゝそうですか。ぼく尾関と言います。北原をこゝへ呼んでいたゞきます」

…………

市ノ瀬牧人は、応接間へ引つこんでから、この問答にわれ知らずきゝ耳を立てゝいた。そして、とき/″\、北原ミユキの顔色をよんでいた。それは、一種の妙な気持で、まずいところへ居あわせてたというふうな後悔でもあり、北原ミユキという女の秘密をのぞきあてた好奇心でもあつた。

と、井出夫人が、ドアを開けて、静かにはいつて来た。そして、低く北原ミユキの耳もとでさゝやいた――

「わかつた? 会う?」

北原ミユキは、別にわるびれる様子もなく、

「会います。しかたがありませんわ。でも、こゝじやご迷惑かしら?」