Classici giapponesi con furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate
八
康子は、この砂丘が海岸まで続いているものとは察したけれども、それが、どんな広い地域を占めているのかは想像がつかなかつた。おそらく、あとまだ十キロは歩かなければ目的の場所へは行き着くまいという計算である。そう考えると、やつぱり、急いで道を迷うことが一番おそろしいのである。
ゆつくり弁当をつかうことにした。
モトムは、もう顔をしかめていた。
と、その頃から、急に冷い風が吹きだした。すると、海の方角にあたつて、白煙のようなものが立ちのぼり、その白煙の巨大な幕が、しだいに陸をめがけてはいあがつてくる。
「来た、来た……」
と、彼女は、つい口にだして言つた。そして、無意識に顔を伏せ、モトムのからだを自分の胸の下へ抱きよせて、しばらく、息を殺していた。モトムの手は彼女の肩のあたりでふるえているようであつたが、彼女は、自分のからだがふるえているのかもしれぬと思い、
「こわいことなんかないのよ。ほら、きのうだつて、この通りだつたじやないの」
しかし、きのうの様子とは、まるで違つていた。第一に、それは襲いかゝるような勢いで彼女たちを取りかこみ、たちまち、動きのとれぬものにした。