Classici giapponesi con furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate
四
そこで、これはあたしの最後のお願いだけれど、あなたのお力、拝借したいわ……」
井出夫人の哀訴にもちかい言葉の調子、そして、眼つきから、市ノ瀬牧人は、たゞならぬものを感じとつた。
「わしにどんな力があるかしら?」
彼は、ぐつとつばをのみこんだ。
四
井出康子は、すこし首をかしげたまゝ、市ノ瀬牧人の顔色を読むように、
「北原先生つていう方は、あたし、とても純粋な、しつかりした方だと思うの。普通の女のように引込み思案でなく、そうかといつて軽薄なお先つ走りでもない、とても頼もしいところのある方ね。あの方に愛される男つて、どんなに仕合せかと思うくらいだわ。それだけに、北原先生を幸福にしてあげられるような男は、そんなにざらにいないつていう気もするけれど、あたし、その役をあなたに引受けていたゞきたいのよ。ちよつとお待ちなさい、あたしに言うだけ言わして……」
と、井出康子は、何か言いかけた相手を制して、
「もちろん、北原先生がその婚約の方をあきらめるつていう条件でよ。あたしがそうさせるから大丈夫よ。結局、北原先生の愛があなたに移るということは、あなたがそれを必要となさるかどうかできまるの。