Classici giapponesi con furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate
十
十
翌日は、頭が痛むと言つて、北原ミユキは店を休んだ。
「くよ/\せんとおき。ゆんべの元気、なくさんとおいてや」
同宿の筒井レイ子は、そう言いながら、彼女をひとり部屋へ残して出て行つた。
午後は雨になつた。
手紙を書きたいと思うのだけれども、机もなにもないこの部屋では、腹ばいになつて書くよりしかたがないのである。
だれに手紙を書こうというのか? それは井出夫人にである。けさ、ふとそれをおもいついた。どうしても書かずにはいられないのである。
先日の手紙はごらんくださいましたでしようか。なにを書きましたやら、さぞお読みづらかつたことゝ存じます。ところが、また、奥さまに手紙をさしあげたくなりました。ほかにだれも話しかける相手がございません。話せば気持がほつとするというような相手が、奥さま以外にはないのです。それはわたくしにとつてあたりまえのことですけれども、奥さまは、ことによると、そんなことは想像もなさいませんでしよう。どうかわたくしのわがまゝをお許しくださいませ。そして、しばらく我まんをあそばして、とりとめもないわたくしのおしやべりをお聞きくださいませ。