Classici giapponesi con furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate
それは君の想像の範囲のなかにあることだ。だれかの細君が証人として呼びだされたのは、あれは、マニラの法廷だつたな。君もそれが許されゝばやるだろう? やりたいだろう? まず、彼が詩人であつたということを強調するんだね。しかも、愛の詩人だ。君はその詩の一つを朗読して聞かせるさ。人間的感動こそ、今度の戦争裁判を正しくささえるものなんだよ。なぜなら、彼等犯人を裁くものは、だれでもない、人類そのものだというんだから……」
こういうじよう舌のなかに、尾関の彼女に対する思いやりがあふれていた。
彼女は、眼をそらしたまゝで、こたえるともなくこたえた。
「覚悟なんて、まるでしてやしませんわ。そんなはずないと信じてたんですもの。今の今まで信じきつてたんですもの。でも、こうして新聞に出たら、もうしかたがないわ。無罪の判決なんて、ほんとにあるかしら?」
こゝで、彼女は、かすかにほゝえんだ。自分で強いて描こうとする一るののぞみが、まさにはかないものだということを感じたからである。
「そりや、ないことはないさ。君としては、最後まで希望をすてちやいけないよ。しかし、運命はだれの幸福だつて跨みにじるからね。