Classici giapponesi con furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate
「まあ、そういう方がいてくだされば、どこへ行くのも安心ね」
と、彼女は、つい口に出して言つた。
水の上を渡る風は、もう秋らしくなつていた。
市ノ瀬牧人はあざやかにオールをあやつつた。
「岸づたいじや面白うないで、ぐつと中心まで出てみましよう。それから、まつすぐに見当をつけて、陸へあがりましよう」
「あんまり遅くならない方がいゝわ」
「ひるまでに着けばいゝですよ。どうせ今日は待つてるわけなんでしよう?」
「あたし、酔うかもしれないわ」
「しずかにこぎますよ。これで、すこしはゆれてますか」
「ゆれてるわ、ずいぶん……」
「遠くをみてゝくだざい。あの朝日のあたつてる山のてつぺんをみてごらんなさい。あ、もう、あの山にも雪がくるなあ。冬は早いですよ、このへんは……下伊那よりは、ひと月は早いですよ」
「もう冬なの? いやだわ、夏がやつとすんだところだのに……」
「秋は、つておつしやるんでしよう? 春も秋もそりやあありますよ。たゞ、短いんです。あつと思う間にすぎるんです。ごらんなさい、あの鳥のむれを……あれが、渡り鳥でしよう? 秋が通りすぎるのは、あゝです。ちよつと、奥さん、水へ手をつけてみてください」