Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひのとびら

火の扉

岸田 国士

Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate

Aozora Bunko

七

「そうか。それや可哀そうだつた。電話をかけてよこせばいゝのに。もつともあの駅には普通電話はないのか。まあ、いゝ、無事に来れたんだから……。みんな変りないね? モトムは元気か? かい虫がわいたつていうじやないか? そんなものはすぐ出せる。いなかはどうだい、いなかは? 百姓は日本が負けたつていうことを、実際に感じてないだろう? お前たちだつて、戦さに負けるつていうことは、どういうことか、ほんとにわかつてやしないんだ。情ない国民さ。まあ、すわれよ。荷物はそれだけか?」

七

たてつゞけにしやべる夫の前で、康子はしばらく黙つて立つていた。自分ひとりで勝手なことをべら/\まくしたてることが彼にはよくある。それは平生の癖というよりも、どうかしたはずみにそうなるらしい。相手により、場合によつて、むしろ口数をきかぬこともあり、そういう彼もまた、彼らしいのである。康子は、夫のこのとめどのないおしやべりを、ひとつの発作とみていた。鎮まるのを待つより手はないのである。

「お寒くはないかと思つて、チッキで毛布とお下着を二三枚送りましたの。おいり用のものをちつともおつしやつてくださらないから……」