Classici giapponesi con furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate
待合室には次ぎの列車を待つ人の群があふれていた。
彼女の眼は、忙しくその群集の一人々々を探した。もしやさつきの男がまだいるのではないか? ほんとを言えば、それがばくとした目的で、彼女はこゝへ来たのであつた。
しかし、大阪行はよほど前に出たあとで、今夜は和歌山行が終列車でもうそれだけだということがわかつた。
――どうして、あの時、いつしよに出掛けなかつたんだろう? そうじやない、どうして、広島までいつしよに連れて行つてと頼まなかつたのだろう?
彼女はそれが口惜しくてたまらない。――あの男となら安心だし、それに、もつと/\、いろんな話が聞けただろうに! 広島と宇品なら、同じところと言つてもいゝのだ。自分の方からどうしてそれが言い出せなかつたのだろう? 広島と聞いた時、ふつと、そんな気がしないでもなかつたけれど、さすがに、あの時は……。
そう思えば思うほど、取り返しのつかぬことをしたような気になつてくる。なんとかしてもう一度つかまえる方法はないものか、と、もうじつとしてはいられなくなる。人波をかき分けて、彼女は駅長室へ飛びこむ。そして、今夜の大阪行と連絡する下り列車の時間をたずねた。