Classici giapponesi con furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate
四
それから、ちよいと考えてから、自分の着るべき毛布をとりのけて、それを男の肩へ着せかけた。男は、すると、なにやら口の中でつぶやきながら、ぐたりと長く横になつた。座ブトンを折つてまくらにさせようとすると、――や、どうも、すまん、すまん、と意外にはつきりした口をきいたので、筒井レイ子は、――どういたしまして。おそまつなところで、とわざとまじめな顔でこたえる。
部屋を暗くするというので、北原ミユキは、しかたがなしに、そのまゝのかつこうで夜具の中にはいろうとすると、だしぬけに、
「ユキちやん、ユキちやん、すつかり忘れてた……オーさんは病気で入院やて」
その声はもうろうとして真剣だつた。
四
筒井レイ子がオーさんというのは、北原ミユキの一番親しく口をきく店の客で、むろんたゞそれだけの客であるが、これこそ、井出康子にあてた手紙に詳しく書いた、例の田辺の船着場以来、ふしぎなめぐりあわせというか、この宇品の海岸で再び落ちあうことになつた復員者、元陸軍少尉尾関昇なのである。
めずらしく一週間ばかり顔をみせないと思つていた。広島からほとんど毎日のように通つて来る熱心さは、店でももう評判がたつほどであつたが、二人の間は、たゞなんとなく話が合い、お互の境遇に同情と理解とをもつというだけのことである。