Classici giapponesi con furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate
まあ、どうせそうにちがいないわ。だから、生れかわらなきやだめなのよ」
こういう話は、この相手には不向きのようであつた。はたして、中園は、
「むつかしい問題ですね、そいつは……。ぼくは簡単に考えてますよ。義務は愛情を正しくのばす力だ、というふうに。だから、義務は強いられたものじやないんです。ぼくは軍人をやめても……よしましよう、こんな話は……。時に、ピヤノはどうされました? 持つてこられたんでしよう」
急に話題をかえた中園は、そう言つてあたりを見まわした。
「売つてしまいました」
あつさり答える彼女の顔に、複雑な気持を読むには読んだが、彼は、また、調子をかえて、
「どうもぼくは、なにしにこゝへ来たのかわからなくなりました。実をいうと、奥さん、ぼくは多少、なぐさめ役をつとめるつもりだつたんです。ところが、もうそんな必要はないですなあ。立派に覚悟がついておいでですなあ。敬服しました。じや、こんどは、ぼくの方から、すこし苦境を訴えるかな」
と、かたわらの娘の頭へ手をのせるといつしよに、中園は天井を仰いだ。
彼女は、その調子に誘われて、笑つた。が、ふと、眼を庭へうつすと、坪庭の門の外に、市ノ瀬牧人の姿が見えた。